2010年8月20日金曜日

射法訓

抑々弓道の修練は、動揺常なき心身を以て押引自在の活力を有する弓箭を使用し、静止不動の的を射貫くにありて、その行事たるや、外頗る簡易なるが如きも其 の包蔵する処、心行想の三界に亘り相関連して機微の間に千種万態の変化を生じ、容易に正鵠を捕捉するを得ず、朝に獲て夕に失い、之を的に求むれば的は不動 にして不惑、之を弓箭に求むれば弓箭は無心にして無邪なり、唯々之を己に省み、心を正し身を正しうして一念正気を養い、正技を錬り、至誠を竭して修業に邁 進するの一途あるのみ、正技とは弓を射ずして骨を射ること最も肝要なり 心を総体の中央に置き 而して弓手三分の二弦を推し 妻手三分の一弓を引き 而して心を納む是和合なり 然る後胸の中筋に従い宜しく左右に分かるる如くこれを離つべし
書に曰く鉄石相剋して火の出ずる事急なり、即ち金体白色 西半月の位なり


この射法訓は吉見順正氏が竹林派の伝書「四巻の書」の大事な部分をまとめて作ったものらしい。

礼記射義

《射義》

1 射義: 古者諸侯之射也,必先行燕禮;卿、大夫、士之射也,必先行鄉飲酒之禮。故燕禮者,所以明君臣之義也;鄉飲酒之禮者,所以明長幼之序也。

2 射義: 故射者,進退周還必中禮,內志正,外體直,然後持弓矢審固;持弓矢審固,然後可以言中,此可以觀德行矣。

3 射義: 其節:天子以《騶虞》為節;諸侯以《貍首》為節;卿大夫以《采蘋》為節;士以《采繁》為節。《騶虞》者,樂官備也,《貍首》者,樂會時也;《采蘋》者,樂 循法也;《采繁》者,樂不失職也。是故天子以備官為節;諸侯以時會天子為節;卿大夫以循法為節;士以不失職為節。故明乎其節之志,以不失其事,則功成而德 行立,德行立則無暴亂之禍矣。功成則國安。故曰:射者,所以觀盛德也。

4 射義: 是故古者天子以射選諸侯、卿、大夫、士。射者,男子之事也,因而飾之以禮樂也。故事之盡禮樂,而可數為,以立德行者,莫若射,故聖王務焉。

5 射義: 是故古者天子之制,諸侯歲獻貢士於天子,天子試之於射宮。其容體比於禮,其節比於樂,而中多者,得與於祭。其容體不比於禮,其節不比於樂,而中少者,不得 與於祭。數與於祭而君有慶;數不與於祭而君有讓。數有慶而益地;數有讓而削地。故曰:射者,射為諸侯也。是以諸侯君臣盡志於射,以習禮樂。夫君臣習禮樂而 以流亡者,未之有也。

6 射義: 故《詩》曰:“曾孫侯氏,四正具舉;大夫君子,凡以庶士,小大莫處,御于君所,以燕以射,則燕則譽。”言君臣相與盡志於射,以習禮樂,則安則譽也。是以天子制之,而諸侯務焉。此天子之所以養諸侯,而兵不用,諸侯自為正之具也。

7 射義: 孔子射於矍相之圃,蓋觀者如堵墻。射至於司馬,使子路執弓矢,出延射曰:“賁軍之將,亡國之大夫,與為人後者不入,其餘皆入。”蓋去者半,入者半。又使公 罔之裘、序點,揚觶而語,公罔之裘揚觶而語曰:“幼壯孝弟,耆耋好禮,不從流俗,修身以俟死,者不?在此位也。”蓋去者半,處者半。序點又揚觶而語曰: “好學不倦,好禮不變,旄期稱道不亂,者不?在此位也。”蓋僅有存者。

8 射義: 射之為言者繹也,或曰舍也。繹者,各繹己之志也。故心平體正,持弓矢審固;持弓矢審固,則射中矣。故曰:為人父者,以為父鵠;為人子者,以為子鵠;為人君 者,以為君鵠;為人臣者,以為臣鵠。故射者各射己之鵠。故天子之大射謂之射侯;射侯者,射為諸侯也。射中則得為諸侯;射不中則不得為諸侯。

9 射義: 天子將祭,必先習射於澤。澤者,所以擇士也。已射於澤,而後射於射宮。射中者得與於祭;不中者不得與於祭。不得與於祭者有讓,削以地;得與於祭者有慶,益以地。進爵絀地是也。

10 射義: 故男子生,桑弧蓬矢六,以射天地四方。天地四方者,男子之所有事也。故必先有志於其所有事,然後敢用穀也。飯食之謂也。

11 射義: 射者,仁之道也。射求正諸己,己正然後發,發而不中,則不怨勝己者,反求諸己而已矣。孔子曰:“君子無所爭,必也射乎!揖讓而升,下而飲,其爭也君子。”

12 射義: 孔子曰:“射者何以射?何以聽?循聲而發,發而不失正鵠者,其唯賢者乎!若夫不肖之人,則彼將安能以中?”

13 射義: 《詩》云:“發彼有的,以祈爾爵。”祈,求也;求中以辭爵也。酒者,所以養老也,所以養病也;求中以辭爵者,辭養也。

「礼記」射義編 の遺訓

「射は進退周還(しゅうせん)必ず礼に中(あた)り、内志正しく、外体直く して、
然(しか)る後に弓矢を持(と)ること審固なり。
弓矢を持ること審固にして、然(しか)る後に以って中(あた)と言うべし 。
これ以って徳行を観るべし。
射は仁の道なり。射は正しきを己に求む。
己正しくして而して後発す。
発して中らざるときは、則ち己に勝つものを怨みず。
反ってこれを己に求むるのみ。」

と示している。
これを見ると、射行は、

1)心志の安正、
2)身体の安定、
3)弓技の審固、との三点を眼目とし、

これを修練することによって「仁」「義」「礼」「智」「信」の徳行が体得さ れる。
矢を発して中(あた)らなければ他を怨むようなことなく、反ってこれを己に 求めて
よく反省せよ、と教示してあって、弓道は儒教を基礎とした道徳の修養道であ ると見
做(な)していることが明白である。

射者仁道(しゃはじんのみち)とか、射裡観徳(しゃりかんとく)とか審固満 分とか
、破邪顕正(はじゃけんしょう)とかいう名句は上にあげた「礼記」の銘文に 基因し
たところのもので、今日わが弓道界においてもこの信念が原動力となっている ことを
忘れてはならない。

射法

射法とは、弓矢をもって射を行う場合の射術の法則をいい、弓道を修練する場合には、まずその基準となり法則となっている射法を、よく理解することが必要である。

昔から射法の形式は七道または五味七道と称して、一本の矢を射る過程をその推移に順応し、七項目にわけて説明されているが、近世これに「残心」(残身)という一項を加えて八節となった。すなわち、次のような名称で区分されている。
上記のように区分されているが、射の運行にあたってはこれらは終始関連して一環をなし、その間分離断絶することがあってはならない。たと えば一射は一本の竹のようなもので、この一貫した竹に八つの節があると同じである。八つの節は相互に関連する一本の竹であるけれども、また異なった八つの 節であることに注意しなくてはならない。

■矢束の定め方
矢束は各人の腕の長さによつて定まる。
(安全のため5~6cmの長さを加える。)
■足の踏み方

(1)一足で踏み開く場合
的を見ながら左足を的の中心に向つて半歩踏み開き次に右足を一旦左足の辺にひきつけ右へ一足で扇形に踏み開く、その場合足もとを見てはいけない。
(2)二足で踏み開く場合
的を見ながら左足を的の中心に向つて半歩踏み開き次に目を下にうつして右足をこれと反対に半歩踏開く。
1、足踏み
矢束(やづか)を標準として外八文字(約六十度)に踏み開き両拇趾頭を的の中心と一直線上に在らしむ。

2、胴造り
重心を総体の中心におく。
『弦調べ箆調べ』弦の位置、矢の方向を調べ気息をととのえる。

3、弓構え
正面にて取懸、手の内をととのえ、物見を定む。
■手の内の調え方

4、打起し
弓構えの位置からそのまま静かに両拳を同じ高さに打起す。

5、引分け
肘力、大三(押大目引三分一)をとり、左右均等に引分け会に到らしむ。
■『矢みち弦みち』

6、会
心身を合一して発射の機を熟せしむ。胸は息を詰めず、らくに腹の力が八九分に詰った時が離れである。
■『五重十文字』
一、弓と矢 二、弓と押手の手の内 三、右手の拇指の腹と弦 四、胸の中筋と両肩を結ぶ線 五、首筋と矢以上の五ヶ所の曲尺合を覚え其の働きを知ること。

7、離れ
胸廓を広く開き矢を発せしむ。
上下左右に十分伸び合い気力丹田に八九分詰りたる時気合の発動により矢を発する。

8、残心(身)
矢を発し姿勢を変えず矢所を注視する。
離れて気合をぬかず十分伸び合い弓倒しをする。
残身(心)は射の総決算である縦横十文字の規矩を堅持する。

呼吸に合わせ両拳を腰に執り物見を静かにもどす。

弓道

弓道は、他の競技と多少異なり、相手は人でなく的であり、一人で楽しむことができます。

素朴で親しみやすく、少年からご年配の方まで、年齢や男女を問わず、それぞれ自分の体力に応じた強さの弓を使って過激すぎることもなく、晴雨に係わらず練習時間も自由に調整することが可能な誰にでもできる武道・スポーツです。
静止不動の的に対して、当たり・外れ、射行(しゃぎょう)として成功・失敗と一本一本を味わいながら楽しめて興味の尽きないのが弓道です。
正しい姿勢で正しい射(弓を射ること)、背骨を伸ばし胸郭を広げて左右の均衡を図り、気力を丹田に収め、満を持して離 さぬ精神の集中、そこから生まれる正確な的中。「自分」と「弓」、そして「的」の三者が一体となって冷静に正確に果断に射放つ。尽くしてもなおかつ的中し ない、当たらなければそれはすべて自分に起因する。その原因を求めて自己反省をする。それがまた精神面の修練に大きくプラスするところであり、こよなく弓 道が愛される所以でもあります。
弓道の弓には照準機がついていません。自分の体感だけを頼りにしていますので、周囲の状況、対戦相手の的中等に影響さ れやすく、ちょっとした心の動揺で射術が狂ったりすることはよくあります。そこで、平素から射法の基本動作を確実にして、密度の高い練習を重ねて的中率を 高めることはもちろんですが、物事に動じない、いわゆる「不動心」を養い、淡々とした平常心で行射できるよう修練しておくことも大切なことです。
弓を引く動作を八つの節に分けて「射法八節」といい、一つ一つを正しく組み立てることになっています。この八節は別々のものではなく、始めから終わりまで一連の動作で一貫した流れのように行わなければなりません。これを正確に行うことによって的中率は高くなります。

最高目標「真・善・美」

真
弓における「真」とは「真の弓は偽らない」ことであって、矢は正しく狙った的に真っ直ぐに飛ぶから的中にも 偽りはない。偽りのない射はどのようにあるべきか、という思いを持つ事も弓における真実の探求の一面であり、現在弓を射ているその大部分は「真実の探求」 であるともいえる。弓における真とは、弓の冴え・弦音・的中により立証される。すなわち、一射ごとにこの「真」をもとめてゆくのが弓道(求道)の「みち」 である。
善
ここで「善」というのは、主として弓道の倫理性を指す。弓道の倫理、すなわち礼とか「不争」とかは静かな心境のことであり、心的態度が「平常心」を失わないことが重要である。
弓によって互いに親しみ、弓によって協同し、和平であること。心的にも平静を失わない境地が必要な条件であり現代の弓道の特性である。
美
弓における美とは何かといえば、前にいった「真なるもの」は美しく、「善なるもの」も美しい。これを具体的 に表現しようとする射礼もその一つである。日本の弓は弓自体が最も美しい弓だといえるが、その荘厳性と人間の進退周還、それに静かな心的態度がリズミカル に動くことは、われわれの美的感覚を刺激することが大きい。
安全について

弓は人を死なせてしまうほどの力をもっています。
したがって道場には危険な空間も存在します。一人一人が注意して事故がおきないようにしなくてはなりません。
文京区総合体育館の道場で練習する時の注意点を書いておきます。知っている人は確認を、知らなかった人はここでおぼえておいてください。

1.畳
畳の上がり降りは正面からしてください。
脇からの上がり降りは危険なので控えてください。(向かって右側には巻藁があります。左側から上がり降りするには射位を通らなくてはならず、危険です。)

2.巻藁
安土に向かっておいてある巻藁は矢を抜くとき、射位にいる人が打起していないことを確認してから抜きましょう。

3.矢取りの流れ
(1)
矢取り道に入る前に、取り懸け以降の動作をしている人が射位にいないことを確認し、
パンパンと手をたたいてから「矢取り入ります」と言う(返事があるまで入らない)

道場の人は安全であることを確認したら「お願いします」とこたえる
(安全でなければ「待ってください」と言う)

(2)
矢取りの人は安土に入る前に柱の陰からもう一度パンパンと手をたたき、「入ります」と言う(返事があるまで入らない)

道場の人ももう一度確認し、「お願いします」とこたえる
(安全でなければ「待ってください」と言う)

(3)
矢取りをする(矢はささっている方向にまっすぐていねいに抜く。矢を持っているときは走らない。←矢が曲がったり折れたりするため)

(4)
矢取りの人は安全な位置まで戻ってきたら「どうぞ」と言う

道場の人は「ありがとうございました」とかえし、行射を再開する
(矢取りの人の「どうぞ」があるまでは取懸けずにまっていましょう)
※「どうぞ」は忘れてしまいがちですが、行射再開の大切な合図です。忘れずに言いましょう。
また、矢取りは行きも帰りも畳を通って行ってください。

基本的に弓を引く人の体よりも自分が的(または巻藁)寄りにいるときは、「自分は危険な位置にいる」という意識をもってほしいです。
弓を引く人も周囲に危険な人がいないか確認をしてもらえたら、と思います。
同好会をかたくるしいものにしたくはありませんが、安全についてはみんなで対応していかないといつか大変なことになります。
みんなで楽しく、でもやるときはきちっと、ということで、御理解と御協力をおねがいします。






加筆(2010/8/20)
  • 矢を取って頂いて戻ってきた際には「ありがとうございます」と一声かける。
  • 矢を抜く際、的を左手で押さえながら右手で抜く
  • 体を射場(?)の方には向けない
  • 矢は高いので丁寧に抜く
  • 高級な矢は一本10万円以上する

弓道用語集


弓道用語集
  1. 1.必須編
-------あ行-------
足踏み……射法八節の一番目で、両足を踏み開いて土台をつくる動作。一足の足踏み、二足の足踏みがあるが、同好会内では一足の足踏みを指導している。
中り(あたり)……矢が的を射抜くこと。的のどこに当たってもよい。
安土(あづち)……的を置くところ。土でできていて、適度な湿りが必要。
後ろ……的に向かって左側のこと。射手にとっての後ろ側である。反対に右側は前という。
打起し……八節の四番目。弓を持ち上げる動作。
上押し……弓を押すときの押し方。通常は、「中押し」が良い。
円相……弓構えや打起しのときの、両腕の姿。大木を抱くような気持ちで両腕を構える。
大前(おおまえ)……その射場における一番前の的。もしくはそれに向かって弓を引く人。
大後(おち)……大前の反対。一番後ろの的、もしくはそれに向かって弓を引く人。
------か行------
会(かい)……八節の六番目。引き分けの後、外見上は止まっている状態。八節の中で射手の精神が最も試される箇所。
皆中(かいちゅう)……持っていた矢を全て的中させること。相当の精神力が必要。
かけ……?(ゆがけ)の略称。妻手(めて)につけて使う。水に弱いので、取り扱い注意。
弓道……大変奥深い武道。難しいが、面白い。
競射……決まった本数だけ矢を放ち、的中数を競うこと。
ギリ粉……松脂などを煮詰めてすりつぶした黄色い粉で、滑り止めとして?につける。
口割(くちわり)……会で、矢が唇の線と重なること。きれいに引けているかどうかの指標のひとつ。
虎口(ここう)……親指と人差し指の間のこと。弓を押すときに使う一番大切な場所。
ゴム弓……矢番えの前段階で、主に離れの練習に用いる。基礎練習用具としてもよく用いられる。
------さ行------
坐射(ざしゃ)……審査などで用いられる作法。これに対し普段の練習の作法は立射(りっしゃ)という。
三重十文字……両足、両の腰骨、両肩を結ぶ線が互いに平行で、なおかつそれらが体の中心線と直交すること。非常に重要だが崩れやすい。
残身(残心)……八節の最後。射のまとめ、締めくくりであり、射の良否が顕れる。また次につなげる反省の場でもある。
したがけ……?の下につける布。まめに取り替えること。
射位(しゃい)……射手が弓を引く位置。道場内で決まっていて、射手は射位の線が体の中心となるように立たなくてはならない。
射形……弓を引くときのフォームのこと。しばしば矢の行き先を決定する要因となる。
射法八節……弓を引くときの作法を八段階に分けたもの。基本中の基本なので、最初に覚えよう。
素引き(すびき)……矢を番えずに弓を引くこと。準備運動&基礎練習。弓が傷むので、決して離してはいけない。
正射必中……正しい射をすればかならず的に矢が当たるという弓道の最高目標の一つ。
      ただし逆に、矢が的に当たったからといって正しい射をしたとは言えない。
------た行------
大三(だいさん)……押大目引三分一(おしだいもくひけさんぶいち)の略。引分けの途中これをとる。大変重要な箇所である。
段位……全日本弓道連盟加盟者が審査を受けて、合格するとくれる。
角見(つのみ)……弓手手の内の親指の付け根。弓道で、最も技が必要とされる部分。
弦(つる)……弓に張るひものこと。「げん」と読まない。行射中たまに切れる。
弦輪……弦を弓に掛けるために作る輪のこと。上下の区別がちゃんとある。自分で作れるようになろう。
手の内……弓手の手の内、妻手の手の内があるが、通常は弓手手の内を指す。弓を押す力を効率よく弓に
伝え、その性能を引き出すためにこれを整える。非常に難しい。
胴造り……八節の二番目。足踏みを基礎として、胴体を正しく安定な位置に置く動作。外見上は目立たな
いが、非常に重要である。
執弓(とりゆみ)の姿勢……弓を弓手に持ち、矢を妻手に持った姿勢。射法八節と並んで、弓道における
基本的姿勢である。
------な行------
中押し……弓の押し方の一つ。通常は、これが最も良いとされる。
中仕掛け(なかじかけ)……弦の中央部、矢を番えるところ。すこし太くしてある。自分でつくれるよう
になろう。
並寸(なみすん)……普通のサイズの弓。身長170cm以上の人は、これより少し大きい「伸寸」の弓を
使いましょう。
伸寸(のびすん)……並寸よりすこし大きめの弓。二寸伸び、四寸伸びなどがある。背の高い人はこれを
使う。
------は行------
掃き矢(はきや)……安土まで届かず、地面を滑走した矢。掃き矢が跳ね返って的に当たることが
稀にありこれを掃き中りというが、的中とはみなされない。
筈(はず)……矢についている、矢を弦に番えるための部分。たまに割れたり、外れたりする。
筈零れ(はずこぼれ)……いったん番えた矢が、行射中に弦から外れてしまうこと。その矢は的から外した矢とみなされる。
離れ……八節の中の七番目。矢を放つ動作。「離す」という意識的なものではなく、自然な「離れ」こそが理想。
膕(ひかがみ)……膝の裏筋のこと。足踏み及び胴造りでしっかりと伸ばしておく。
引分け……八節の五番目。実際に弓を引く動作。途中、大三をとる。
筆粉(ふでこ)……ギリ粉に対し、左手側の滑り止め。弓の握り皮につける。灰色。
ベタ押し……上押しの逆。左手で弓を握ってしまっている手の内のこと。よくない。
頬付け……会で矢が頬につくこと。正しく引けているという指標の一つ。
------ま行------
巻藁(まきわら)……藁を束ねたもの。これに向かって矢を放って練習する。
巻藁矢……巻藁用の矢。羽が付いていないものもある。危険なので決して的前で用いてはならない。
的張り……たくさん矢が中ってぼろぼろになった的の、的紙を張り替えること。
的前……的に向かって矢を放つこと。ここに辿り着くまでに、徒手練習、素引き、ゴム弓、
そして巻藁練習と、長い道のりがある。がんばろう。
胸弦(むなづる)……会において、弦が胸にあたること。正しく引けているという指標の一つ。
妻手(めて)……右腕のこと。馬手(めて)、勝手(かって)とも言う。
もたれ……体が弓にはまりこんでしまい、離せなくなる様子。
物見……的を見る動作。
------や行------
矢数……射た矢の本数。たくさん射ることを、「矢数をかける」という。
矢尺(やじゃく)……矢自体の長さ。矢束との違いに注意。矢束+10cmの矢尺のある矢でないと、
危険なので引いてはいけない。
矢束(やづか)……自分が実際に引き込んでいる矢の長さ。足踏みの幅の目安となる。
矢筒(やづつ)……矢を持ち運ぶための入れ物。あまりたくさん入れすぎると、矢が傷む。
矢取り……安土の方へ飛んで行った矢を回収すること。またその人。安全確認が非常に重要である。
揖(ゆう)……ごく浅い礼。いろいろな場面で使われる。上半身を10cm傾ける。
弓構え(ゆがまえ)……八節の三番目。取り懸け、手の内を整え、物見を定める。
弓倒し(ゆだおし)……残身の後、元の姿勢に戻るために弓を倒す動作。物見を返す前に行う。
緩み……離れの瞬間、せっかく引いたのにいったん小さくなってしまっていること。
------ら行------
立射(りっしゃ)……坐射に対し、立ったままで行射する作法。通常の練習はこれで行う。
    Ⅱ、上級編
息合い(いきあい)……弓道で用いる息遣い。
板付(いたつき)……矢の先のこと。矢尻とも言う。
末弭(うらはず)……弓の上の、弦を掛けるところ。逆側を「本弭(もとはず)」という。
遠近競射(えんきんきょうしゃ)……試合などにおいて用いられる順位決定法の一つ。一つの的を用いて、
複数の射手が矢を射て、的の中心に近い順に順位を決定する。
遠的(えんてき)……射位から的までが60mの競技方式。これに対し、通常の28mの形式を
「近的(きんてき)」という。
押手かけ……左手手の内が痛いときにつける、左手用の?。親指だけを保護する。
乙矢(おとや)……矢の種類。甲矢(はや)と二本一組でセット。甲矢とは、羽のついて
いる向きが反対なので見分けることができる。
介添え(かいぞえ)……射手の後見役。一切の面倒を見る。かなり大変。試合や射礼など
で重要な役割を果たす。
替え弦(かえづる)……弦切れなどに備えて作っておくスペアの弦。弦巻で携帯する。
審査や試合の時に役に立つ。
下進上退(かしんじょうたい)……弓道における作法。前に進んだり立ち上がったりするときは下座の足
(左足)から、反対に退くときは上座の足(右足)から行動する。
数矢(かずや)……みんなで使う、安価な矢。同好会では備品矢がこれにあたる。
空筈(からはず)……離れの瞬間筈零れして、弦だけ離してしまうこと。結構こわい。
看的(かんてき)……矢が的中したかどうかを確認すること。またその人。
跪座(きざ)……爪先を立てて正座した姿勢。坐射等で多用される。
基本体……弓道における作法の基礎となる計12個の姿勢・動作。これを元に体配は構成されている。
級位……段位の下。一番下が5級で、1級の上が初段。全日本弓道連盟加盟者が審査を受けるともらえる。
弓力……弓の強さ。「強い、弱い」で表現し、「重い、軽い」とは言わない。
行射……射を行うこと。行射する、という。
金的(きんてき)……お祝い事などに使う、小型で金色の的紙が張ってある的。
候串(ごうぐし)……的を安土に固定させるために用いる串。竹製のもの、鉄製のものなどがある。使わ
れないことも多い。
腰板……男子用の袴についている、腰のところの板。これを意識していると、姿勢が良くなる。
五重十文字……会の構成に必要な、5つの直交条件。①弓と矢②弓と押手の手の内③?の親指と弦④両肩
の線と背骨⑤首筋と矢 
失(しつ)……射礼時に筈零れ、弦切れ等が起こってしまうこと。失には個々にその処理の作法がある。
称号……練士、教士、範士の3つがある。5段以上の人が審査を受けて合格すると練士の称号を授けられ、
練士が審査を受けて合格すると教士の称号がもらえる。範士は、教士の中から推薦で選ばれる。
束中(そくちゅう)……皆中とほぼ同義。矢が2本中2本的に中ること。逆を束外(そくがい)という。
体配(たいはい)……弓道における作法のこと。基本体を基礎として成り立っている。
付(つけ)……ねらいのこと。右目で的をねらう。最初は後ろから人に見てもらおう。
爪起こし……?の内部で親指をそらせること。離れがスムーズになるが、最初のうちはなかなかできない。
爪揃え(つまぞろえ)……弓手手の内で、中指、薬指、小指の指先を揃えること。手の内の働きが正しく
なり、見目も良い。
弦調べ……胴造りにおいて、筈を中心として上下に視線だけを移動させる動作。このまま箆調べに移行。箆調べと同様、弦の状態の確認というよりは、射手の心を落ち着ける意味合いが大きい。
弦音(つるね)……矢を放ったときの音。音色で射の良否が分かる。
弦巻……替え弦等を携帯するためのもの。弦が折れないようにこれに巻きつけておく。
籐……弓に巻いてある、薄い木。編んだりしたものもある。
胴……胴造りにおける胴体の位置の種類。中胴の他に、反る胴、屈む胴、懸かる胴、退く胴がある。
いずれも練達者が用いる応用的なものであるが、近的では中胴が重要。
道宝(どうほう)……中仕掛けを作る際、弦を捻りながら打ちつけて固めるための道具。
執矢(とりや)……一手の矢(甲矢と乙矢のセット)を同時に持って弓を引く引き方。
握り皮(にぎりかわ)……弓に巻いてある握りのところの皮。鹿皮製。ここを持って、弓を引く。
箆撓い(のじない)……?のひねりが強すぎて、会で矢がしなっている様子。矢飛びが悪くなる。
箆調べ(のしらべ)……弦調べのあと、顔を的方向に向けつつ目線を矢の上に走らせること。弦調べ同様、
射手の気持ちを落ち着かせる意味合いが強い。
把(は)……握りの位置における、弓と弦との幅。幅が広いことを「高い」、狭いことを「低い」という。
高すぎても低すぎても良くない。
羽引き(はびき)……矢番え後、少しだけ弓を引いておくこと。羽が痛まないですむ。
早気(はやけ)……会での伸び合いがなく、引いたとたんすぐに離してしまう癖。治すのが難しい。
羽分け(はわけ)……放った矢の半分が的に中ること。
一手(ひとて)……甲矢(はや)、乙矢(おとや)の1セットのこと。2セットは四つ矢という。
帽子……?の、親指部分にあたる堅いところ。
棒矢……羽の着いてない巻藁矢のこと。もしくは単に巻藁矢のこと。
本座(ほんざ)……射位に入る前の待機場所。道場内で決まっている。
麻天鼠(まぐすね)……切れてしまった弦などをわらじ状に編んだもの。弦には天鼠(くすね)という
接着材があり、このまぐすねでそれをこすって溶かすことで、弦を強くする。
的紙……的に貼る紙。いろいろな模様がある。同好会で用いているのは「霞的」。
的矢……的前で用いる矢。近的用、遠的用がある。巻藁矢とは、板付も少し違う。
的枠……的の枠部分。木でできており、ちゃんと上下がある。
三つ?(みつがけ)……三本指の?。最も一般的。他に四つ?、諸?(もろがけ)がある。
本弭(もとはず)……末弭(うらはず)の反対側の、弦を掛けるところ。胴造り、弓構えにおいて、ここ
を左膝頭に置く。
矢摺り籐(やずりどう)……握り皮のすぐ上の籐。手の内が上手くないと、ここをよく痛める。
矢立(やたて)……練習中に矢を出しておく入れ物。入れすぎると、羽が痛む。
矢飛び……飛んでいく矢の勢い。
矢道(やみち)……射場と安土の間の、芝の部分。矢が飛んでいく空間。
矢渡し……審査や試合の前などで、その集団の最高段位保有者が開会前にする儀式。かっこいい。
弓返り(ゆがえり)……弓手手の内が上手いと、離れた後に自然と弦が弓手の裏側に回る。ただし無理に
           返そうとしたり、離れの瞬間手の内を緩めるのはよくない。
弓立(ゆたて)……練習中、弓を置いておくところ。
弓袋……弓を入れておく袋。防護用。